🐾 ペットフードの基準と安全な選び方
はじめに:ラベルの「基準」と、毎日の「安心」は別もの
「総合栄養食」と書かれていれば安心──多くの飼い主さんがそう感じます。
ただしこれは“栄養成分の最低基準を満たす”という意味で、原材料の質や加工過程まで保証するものではありません。
本稿は、AAFCOや国内表示を前提に、原料・製法・炭水化物比率・酸化や保存までを含めた“実務的な見極め方”を中立に整理します。
1. 「総合栄養食」表示の正体
多くのドライ/ウェット製品はAAFCOまたはそれを参照した国内基準で設計されています。
これらは栄養素の最低含有量を満たすための基準で、原材料の出どころや吸収性、加工時の変性までは問いません。
失われやすい栄養を補うためにビタミン・ミネラルのプレミックスで数値を整える設計も一般的です。
2. AAFCOと国内の違い
- 思想: AAFCOは最低要件の充足が軸。日本も概ね参照。
 - アップデート頻度: 海外のほうが改訂スピード/検証手法が先行する傾向。
 - 読み方のコツ: 「基準適合=最低限」「安心の本体=原料×製法×管理体制」。
 
3. 数字より“体が使える形”が大切
栄養設計が完璧でも、消化吸収できなければ意味がありません。
高温加工はアミノ酸/脂肪酸/酵素の変性や酸化を招きやすく、生体利用性が下がることがあります。
一方、非加熱(ローフード)は栄養の形を保ちやすい反面、衛生・温度管理・検査体制が品質を大きく左右します。
4. ドライ/ウェット/非加熱それぞれの要点
| カテゴリー | 長所 | 留意点 | 
|---|---|---|
| ドライ(押出成形) | 流通が容易/価格安定/開封後管理が比較的ラク | 高温加工で変性/酸化の余地、炭水化物比率が高くなりやすい | 
| ウェット/缶詰 | 水分摂取を助ける/嗜好性が高い | 製品により糖類/増粘剤/食塩が多い例、容器殺菌後の栄養変化 | 
| 非加熱(生肉) | 栄養の形を保持/加工由来の変性が少ない | 衛生・温度・検査が品質の鍵。解凍/保管の運用が必須 | 
5. 安全なフードを見極めるチェックポイント
ラベルだけで判断せず、次の“裏側の品質”を確認しましょう。
- 原材料の具体性: 「チキン/ビーフ」だけでなく、部位・品質まで分かるか。
「副産物」「ミール」の多用は詳細確認を。 - 主原料と代謝の整合性: 穀類・豆類・芋類はドライ成形に使われやすい一方、犬は脂質/タンパクを主エネルギーとする動物。
炭水化物が過多だと血糖の乱高下・膵臓/肝臓の負担・脂肪蓄積・慢性炎症のリスクが上がります。
「主原料が穀類中心」の製品は慎重に。少量の併用は設計意図次第で問題ないケースもあります。 - 炭水化物比率の簡易計算: ラベルに炭水化物は載らないことが多いため、
100 −(粗タンパク+粗脂肪+粗繊維+灰分+水分)= 炭水化物% で目安を把握。 - 加工温度と工程: 高温・長時間の押出成形は変性/酸化の余地。低温製法や酸化対策の有無を確認。
 - 酸化/衛生/検査: 抗酸化剤の種類(合成/天然)、温度管理、開封後の保存推奨が明確か。
 - ウェットの糖類/塩分: 原材料に糖類(ブドウ糖、シロップ等)や過度な増粘剤/食塩が入っていないか。
 - 理念と透明性: なぜその原料/製法なのか。品質思想/研究連携/改善姿勢が語られているか。
 
※「加工=悪」「生=正」ではありません。大切なのは“どう作り、どう管理しているか”。
6. フードを見るときの3ステップ
- ラベルで把握: 主原料と添加物、保証成分(水分含む)を確認し、炭水化物%を計算。
 - 製法と管理: メーカーサイトで加工温度/酸化対策/保存指示を確認。
 - 犬の変化を記録: 便(色/硬さ/回数)・被毛・体重/体型・行動・ガス・皮膚を2〜3週間観察。
 
7. よくある質問(FAQ)
穀物不使用(グレインフリー)は必ず良いの?
「穀物不使用=高品質」とは限りません。豆類/芋類が主原料で炭水化物過多になる例も。
主原料が何で、炭水化物が何%かを確認して総合的に判断しましょう。
ウェットの“糖類”はなぜ問題?
嗜好性やテクスチャ調整のために加えられることがありますが、血糖変動や体重管理の観点で望ましくない場合があります。
砂糖/シロップ/ぶどう糖などの表記がない製品を優先すると安心です。
非加熱(ローフード)は安全?
非加熱フードは、素材の栄養を壊さずに届けられる一方で、温度管理と衛生管理がとても重要です。
製造から流通までの過程で温度が保たれているか、原料や設備の衛生管理がどう行われているかが品質を左右します。
HUGBOXでも、自社工場で温度・衛生を徹底しながら、今後さらに検査体制を整備していく方針です。
飼い主としては「どのような環境で作られているか」を確認し、信頼できる体制のブランドを選ぶことが大切です。
8. 数字と“作り手の思想”を両目で見る
表示の基準はあくまでスタート地点。
原料の具体性・加工温度・炭水化物比率・酸化や衛生管理・そして作り手の理念──この5つの視点を意識するだけで、
ラベルの裏側にある“本当の安心”が見えてきます。
毎日の一皿を選ぶことが、愛犬の未来の健康を守る第一歩です。
※疾病管理や大幅な食事変更は、必ずかかりつけ獣医師にご相談ください。