犬の肝臓ケアごはん|数値だけに振り回されないための食事設計

犬の肝臓ケアごはん|数値だけに振り回されないための食事設計

🐾 犬の「肝臓ケアごはん」

血液検査で
「ALT(GPT)が高いですね」「肝臓の数値が少し…」
と言われたことはありませんか?

肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれるほど、
かなりダメージが進むまで症状が表に出にくい臓器です。

だからこそ、肝臓ケアでは
数値だけに振り回されない「日常の食事設計」がとても重要になります。

■ 肝臓は「解毒」だけの臓器ではない

肝臓の主な役割は

  • 栄養素の代謝・貯蔵
  • たんぱく質・脂質・糖質の調整
  • 胆汁の生成(脂質消化)
  • ホルモン・老廃物・毒素の処理

つまり肝臓は、
食べたものすべての“ハブ”となる臓器です。

そのため、食事の質が悪いと
肝臓は常にフル稼働を強いられます。

■ 「肝臓が悪い=低たんぱく」は本当?

これは腎臓と同様、非常に誤解の多いポイントです。

肝臓病の食事管理で大切なのは

❌ たんぱく質を減らすこと
⭕ 代謝負担の少ない「良質なたんぱく」を適量摂ること

たんぱく質は

  • 肝細胞の再生
  • 解毒酵素の材料
  • 免疫維持

に不可欠です。

過度な制限は

  • 筋肉量低下
  • アンモニア処理能力の低下
  • 回復力の低下

につながることが分かっています。

■ 肝臓に負担をかけやすい食事の特徴

  • 高温加工で酸化した脂質
  • 品質の低いたんぱく原料
  • 過剰な合成添加物
  • 糖質・精製炭水化物の多用

これらは肝臓での

  • 解毒負荷増大
  • 脂肪肝リスク
  • 慢性炎症

を招きやすくなります。

■ 肝臓にダメージを与える“本当の主因”──薬・化学物質という現実

肝臓に負担をかける要因として、食事ばかりが注目されがちですが、
実際にはそれ以上に強いダメージを与える要因があります。

それが、薬剤や化学物質による肝臓負荷です。

肝臓は体内に入った異物を分解・解毒する最前線の臓器。
そのため、多くの薬は肝臓で代謝されます。

肝臓に影響を与えやすい代表例

  • 消炎鎮痛薬(NSAIDs)
  • ステロイド剤
  • 抗てんかん薬
  • 抗生物質の長期投与
  • ノミ・マダニ駆除薬、フィラリア予防薬
  • ワクチン
  • 一部サプリメントの過剰摂取

これらは必要な治療手段である一方、肝臓にとっては確実な代謝負担となります。

なぜ薬は肝臓に負担をかけやすいのか

薬剤は肝臓内で酵素分解される過程で、
酸化ストレスや活性代謝物を生じることがあります。

その結果、
ALT・AST上昇の原因が食事ではなく薬剤というケースも少なくありません。

数値が上がったときに見直したい視点

  • 直近で使用した薬や予防薬
  • 長期投与中の処方薬
  • 複数サプリメントの併用

食事変更だけでなく、生活全体を俯瞰して考えることが重要です。

食事は薬の代わりにはなりませんが、
肝臓が回復するための「環境」を整える役割を担っています。

■ 肝臓ケアごはんの4つの柱

① 良質なたんぱく質を適量

  • 未変性・自然形に近い肉
  • アミノ酸バランスの良い素材

👉「量を減らす」のではなく
質を上げることが肝臓ケアの基本です。

② 脂質は“種類”が重要

脂質そのものが肝臓に悪いわけではありません。

問題なのは

  • 酸化した脂質
  • 加熱ダメージの強い油

一方で

  • EPA・DHA(抗炎症)
  • 自然由来の脂質

は肝細胞保護に役立ちます。

③ 抗酸化・肝保護栄養素

  • ビタミンE
  • ポリフェノール
  • 亜鉛・セレン
  • タウリン

これらは肝臓の

  • 酸化ストレス軽減
  • 再生サポート

に関与します。

④ 腸内環境のケア(腸肝相関)

近年注目されているのが
「腸肝相関(Gut-Liver Axis)」

腸内環境が乱れると

  • 内毒素が門脈経由で肝臓へ
  • 慢性炎症の助長

につながります。

そのため

  • 水溶性食物繊維
  • 善玉菌サポート

による腸内ケアは肝臓ケアの土台です。

■ 数値だけで判断しないという視点

ALT・ASTは
「今の肝臓の状態の一側面」にすぎません。

本当に見るべきなのは

  • 食欲
  • 体重・筋肉量
  • 便の状態
  • 元気度・回復力

これらを総合して、
体全体がうまく回っているかを見ることです。

■ まとめ

肝臓ケアごはんの本質は

制限することではなく、
肝臓が「働きやすい環境」をつくること。

良質なたんぱく質、
酸化していない脂質、
抗炎症・抗酸化、
そして腸内環境。

これらを整えることが、
肝臓の回復力を最大限に引き出す食事設計につながります。

※肝疾患の診断・治療中の場合は、必ずかかりつけ獣医師と相談の上で食事調整を行ってください。